ベトナム推しの声が各方面から聞かれるようになりました。私もベトナム株投信ホルダーです。なぜベトナムを推すのか?その理由や根拠、そして今後の見通しについて数回に分けてお伝えしてみます。
第一回目はベトナム株式市場の指数とベトナム経済について、まるっとおさえておきましょう。市場関連データの取得元はInvesting.comさんです。
まずはインデックスユニバースを確認しておきます。

メディアでよく見かける指数は「VN」です。VNはホーチミン証券取引所(HSX)上場の全銘柄からなる時価総額加重平均指数です。ベトナム有力企業がホーチミン市場に上場しているため、メディアでもVN指数が取り上げられることが多いようです。実際、日経新聞の市況欄、SBI証券のチャート、ロイターの市況ニュースなどはVNを取り上げてベトナム市況解説をする場合が多いです。
ベトナムにはホーチミンの他にハノイにも証券取引所(HNX)があります。ハノイ証券取引所の株価指数がHNX指数です。なお、両取引所は2021年12月14日(本日です!)にベトナム証券取引所の完全子会社になりました。
ベトナム株動向を押さえておくためにはVN指数を見ておけば十分だと思いますが、念のためFTSEの「FTSE Vietnam」も見ておきます。FTSEは配当込みのトータルリターン指数も発表しています。ではチャートと主要計数を見てみましょう。観測期間は約5年としています(2017/1/1-2021/12/13)。
チャート1(VN,HNX,FTSE)

比較のためにSP500を掲載しています。コロナショック後のハノイ株価指数の勢いはロケット並みですね。底値から見れば5倍以上の値上がり。。。いやはや恐れ入りました。ただハノイ株価指数には流動性に疑問があり、VN指数が妥当という味方が多いようなので、ハノイ株価指数を除外してみました。
チャート2(ハノイを除きました)

ベトナム株の値動きはSP500とほぼ同じですね。当たり前ですが、観測期間のリスクリターンなどの主要計数(260日の年率換算)もSP500とほぼ一緒です。なぜベトナム株が米国株と高い連動性を維持しているのか・・・これは実に興味深い問いです。そしてこの問いに対する答え(仮説でしかありませんが・・・)がベトナム株を推奨する理由の第一の理由です。
指数 | 平均日次リターン(年率) | 平均日次リターン(年率)の標準偏差 |
VN指数 | 17.7% | 18.3% |
FTSE | 16.9% | 19.3% |
S&P500 | 16.6% | 19.3% |
ハノイ株価指数 | 37.1% | 20.2% |
ベトナム株と米国株との高い連動性の謎を解くために、株式市場から離れて通貨に視点を移してみましょう。
通貨ベトナム・ドンは中央銀行が設定する公示レートを参考に取引が行われる規制通貨です。毎日中央銀行が発表する公示レートが外国為替取引の目安になります。需給によって実際の取引価格が公示レートから著しく乖離しそうになると、中央銀行が為替取引市場に介入して反対売買を行い、ベトナム・ドンの対ドルレートを安定させています。

しかしベトナムは輸出国なので(なんとグロス輸出額はGDP以上!)本来は自国通貨安マインドが強い国です。にも関わらず自国通貨安政策を明示的にも・暗黙的にも発動できない理由は、米国との良好な通商貿易関係を維持しなければならないためです(インフレ率格差とかももちろんありますが・・・)。
ベトナムの最大輸出相手国は米国です。中国、日本が後に続きますが、米国への輸出金額は他国に比べ頭一つ抜きん出ています。ベトナムにとってアメリカはお得意様です。
ところがアメリカからの輸入はそうでもないようです。このためアメリカはベトナムに対して慢性的な貿易赤字を計上していることになります。このためベトナムは米国から為替操作国として認定される恐れを常に抱えています。ベトナム経済は米国との良好な通商貿易関係を維持して貿易黒字を稼ぎつつ、輸出振興により国内経済をドライブさせたい、という微妙なバランスの上に成り立っています。
ベトナムの経済の特徴は
- 輸出国(貿易黒字国)
- 最大の輸出相手国はアメリカ
- 為替レートは対米ドルで極めて安定
と言えます。そしてこの特徴は、ベトナムがアメリカの一つの州である、と読み替えても全く違和感がないことに気付かされます。
この仮説(経済的にはベトナムはアメリカの州である)に妥当性があるとすれば、今年の急騰は単に米株に引っ張られただけ、とも言えるでしょう。米国はコロナから立ち直り、利上げが行えるほどに経済状況に回復してきました。その流れにベトナム株は乗ったと言えそうです。ベトナムは経済的にはアメリカの一つの州なので、自然とアメリカに乗れた、ということです。
「自然と乗れた」ことがミソです。ベトナム独自の強気材料はまだ相場に織り込まれていないのかもしれません。じゃあベトナム独自の強気材料って何だっけ?となるわけですが、今回はここまでにしておきましょう。
なおベトナム一国全体をさっと俯瞰するにはUNCTADの資料が最適です。