感謝祭は軽度なリスクオフ
コロナ変異株オミクロンで世界的に金融市場が揺れています。
11月26日金曜日は世界的に株価が下落、金利は急低下、為替市場では資金調達通貨の円やスイスフランが上昇しました。デリバティブではVIXが急上昇、特にVIX先物はカーブの一部がインバート(右肩下がり)しました。インバートは期近のボラティリティが期先よりも上がる現象で、相場が急落した時に時々出現する珍しい現象です。原因は、投資家が「同じ将来、心配するのは半年先より今日明日」を懸念し、とにかくリスクポジションを削減したいと考えたためです。ただインバートした言っても、現状では限られた部分でのインバートなので、程度の軽いリスクオフと言えそうです。
個人投資家の強みは投資の時間軸。余裕範囲内で積み増し
そもそも株価水準が高い上に金融政策が引き締め方向にあるほか、年末前の利益確定売りが出やすい時間帯でしたので、材料さえあれば株価が下落しやすい市場環境でした。きっかけは何でもよかったのかもしれません。
ともかくこのような市場環境になってしまった以上、投資家が知りたいことは「どこまで下げるのか?」とか「いつまで下げが続くのか?」でしょう。しかしそもそもこれに対する答えなんてないでしょう・・・
では投資家が頼るべきは何か?一つはリサーチです。上段で見たように今の市場状態が正常なのか、それとも異常なのかと言うざっくりとしたものから、もっと精緻に分析したものまで様々なリサーチがあります。投資判断をする上で自分が納得できるリサーチ結果があれば良いでしょう。
リサーチに加え投資家の中でも個人投資家しか持っていない強みを頼りにすることもできます。それは投資のタイムホライズンの長さです。
機関投資家はパフォーマンス次第で顧客が資金を引き揚げるリスクに晒されています。顧客と強固な信頼関係が構築されていれば別ですが、1ヶ月でもパフォーマンスが悪ければ解約されることもあります。
一方個人投資家が運用する資金は自分のお金です。それも10年20年タームで考える資金です。短期間のパフォーマンスにこだわりすぎる必要はありません。もちろん損は少ない方が良いに越したことはありませんし、意図しないリスクを取ることは許されません。しっかりとリスク管理をした上で、ざっくりと考えれば過度に恐れる必要はないでしょう。
金曜日のVIX先物カーブから判断すると、今マーケットは異常状態の入り口にあります。これから異常状態がさらに悪化し、リスク資産が下落するリスクは当然あります。ただ時間をかければ経済も市場も正常に戻ると思いますので、余裕のある範囲内でリスク資産を積み増してゆけば良いと思います。
正常状態への回帰を期待しながら、最後にIMFの経済見通しを見ておきましょう。まずコロナが世界経済に悪影響を及ぼすことが確実になった2020年4月時点の世界経済見通しを見ておきましょう。成長率見通しは3.3%が-3.0%に下方修正されました。2021年の成長率は発射台が低くなったせいもありますが、大きく上方修正されました(3.4%→5.8%)。
以下は10月に発表された最新の経済見通しです。
来年2022年は4.9%成長が見込まれています。通常IMFは4月と10月に半期見通しを発表し、7月と1月に前回見通しの微修正を行います。最新の経済見通しが発表される1月まであと2ヶ月もあり、その間の情報によって4.9%成長の実現可能性が試されることになります。投資家としては様々なソースから情報を集めてくるしかないでしょう。。。
専門家でもない私が言うのも説得力に欠けるのですが、個人的には2020年のような下方修正が今後発生するリスクは小さいのではないかと思う次第です。2022年をマイナス成長におとしめるほど破壊力をオミクロンが持つのか何とも言えませんが、最悪に備えたリスク管理をした上で、余裕範囲内でリスク資産の積み増しが有効戦略と思います。