投資信託

投信セレクション_1_ノルディック社債ファンド為替ヘッジあり

投資家目線で選んだ投信をご紹介

6000本のファンドから自分のニーズを満たすファンド探しは難しいですね。私がサーチするサイトの一つはみんかぶさんです。サーチ対象ファンド本数が4600本近くあり十分なユニバースでしょう。またランキング項目にはシャープレシオがあるので、隠れた良いファンドに出会えたりします。

そんなみんかぶさんから選んだ今回おすすめファンドは、野村アセットマネジメントさんが設定・運用している「ノルディック社債ファンド為替ヘッジあり」です。

「ノルディック社債ファンド為替ヘッジあり」の良いところは3つ

債券ファンドを選ぶ時の注意点は過去のチャートに頼りすぎないことでした。がしかし、まずはこのファンドのチャートみてください。

ファンド概要(2021年11月5日現在)

  • 設定日 2015年4月28日
  • 基準価額 9539円
  • 分配金総額 2280円
  • 分配金修正基準価額 11819円(年率3.9%)

このファンドは設定来で見ると二度大きな下げを食らいました。最初は設定直後の2015年。Fedが2014年1月から始めたテーパリングを終え、利上げのタイミングを計っていた微妙な時期でした。この時中国では株価が大暴落し、いわゆる「チャイナ・ショック」が発生しました。

このファンドは中国には投資しません。しかしチャイナ・ショックにより世界の金融市場でお金が目詰まりを起こし流動性が悪化したため、他のリスクアセットと同様、組み入れていた資産が値下がりしました。2020年はコロナショックですね。

この2時点以外は安定的に右肩上がりで値上がりしてきました。この右肩上がりを支える理由、これこそがこのファンドの良いところになります。

  • ハイイールド債券による高利回り運用 → 右肩上がり
  • 為替リスクがほぼゼロ → ボラティリティが小さくなる
  • 金利リスクがほぼゼロ → ボラティリティが小さくなる

1.ハイイールド債券による高利回り運用

直近の月次レポート(2021年9月)によると最終利回りは6.3%です。実質的な費用は1.695%(税込)なので期待リターンは約4.6%です。国債利回りゼロの時代ですから4.6%は間違いなく高い利回りでしょう。いつかどこかで触れると思いますが、いくつかある投資の原則の一つは、「高い利回りのアセットクラスを長くもつ」です。ハイイールド債は信用力の低い債券のため「デフォルト」が常に頭をよぎりますが、個別の債券でデフォルトを起こしても分散されたポートフォリオにとっては被害は小さいです。デフォルトを起こしたら価値がすぐにゼロになる、と言う考えも行き過ぎです。

2.為替リスクがほぼゼロ

このファンドには為替リスクがほとんどありません。投資通貨はノルウェークローネ39.9%、ユーロ30.1%、米ドル16.2%、スウェーデンクローナ12.9%ですが、外貨ヘッジをしています。ヘッジコストを払っても6.3%の利回りが残っていることは驚異的です。

3.金利リスクがほぼゼロ

このファンドの平均デュレーションは0.7年なので、金利リスクは極めて小さいと言えるでしょう。これは数ヶ月毎にクーポンレートが変わる変動利付債券を69.4%買っているためです。変動利付債券のデュレーションの定義は、今から次のクーポン変更時期まで、です。通常の債券と異なりデュレーションが償還される日付で計算されない点を知っておく必要があります。なお0.7のデュレーションの場合、金利が1%上昇したとしても、債券価格は0.7*1%=0.7%しか下がりません。4.6%のクーポン収入が得られるので余裕でカバーできます。

リスクも3つ

ではリスクは?と言うと、次の3点です。

  • クレジットイベントが勃発した時の価格下落
  • 為替ヘッジコスト上昇による円ベースの利回り低下
  • ファンド管理コストの上昇による実質利回り低下

1.クレジットイベントが勃発した時の価格下落

投資している個別企業の信用リスクがピンポイントで高まったとしても、ポートフォリオは分散されているので影響は微々たるものです。しかし、金融システム不安、コロナショック、XX危機など市場全体が揺さぶられるようなイベントが発生した時は、流動性が目詰まりするため、クレジットの低い債券は間違いなく逆風に晒されます

クレジット市場全体に影響が及ぶような危機イベント、一体何でしょうか?evergrande問題?FRBの利上げ?原油価格の高騰?正直、何がブラックスワンの引き金になるのか、予想出来ません。予想が出来ない事態に直面するからこそ、黒鳥が舞い降りた時には市場が混乱するものです。

ただし嵐はいつかは止みます。黒鳥も去ってゆくことでしょう。混乱が収束すれば、利回りが高い債券は超絶美味しい状態です!価格は急激に前の水準に戻ってゆくでしょう。

2.為替ヘッジコストの上昇による円ベース利回りの低下

ヘッジコストの上昇の方が実はいやらしいリスク要因です。ヘッジコストは両国の金利差によって決まります。通常では3ヶ月程度で為替先物予約をとるため、3ヶ月の金利差がヘッジコストになります(加えて金利差以上のコスト(ベーシスコストと呼びます)を支払うケースがほとんどです)。

先行きの3ヶ月金利や短期金利の見通しはどうか、と言うと海外では利上げ方向ですね。産油国のノルウェーではもう利上げサイクルに入っています!米国もテーパリングを開始し来年は利上げです。一方、ユーロは当分先でしょうか。日本もまだまだ先ですね。

NOKとUSDの組み入れ比率は50%以上なので、この2通貨がどんどん利上げしてゆく状況になれば、ヘッジコストの上昇を通じて円ベース利回りの低下は避けられません。

3.ファンド管理コストの上昇

ファンドの管理コストは信託報酬がほとんどですが、このファンドのように外国籍投信を組み入れるファンドは、外国籍投信の弁護士費用など信託報酬以外に表に現れない費用を負担しています。そしてこれらの費用は定額固定であるケースがあり、要注意です。

例えば次のようなケースです。

このファンドシリーズには二つのシリーズ(ヘッジありが200億、ヘッジなしが30億、合計230億)が用意されています。4.6%の利回り(信託報酬控除後)なので1年間のリターンは10億6千万円です。純資産がこれぐらいの規模ですと、仮に弁護士費用が年間1千万円だっとしてもファンド負担は問題ありません。十分吸収できます。しかし残高が9割減り、23億円になったらどうでしょうか?23億円のファンドで年4.6%で運用できたとしてもリターンは1億6千万円しかなく、1千万円の弁護士費用をここから捻出する負担は以前よりは上昇します。リスクイベントが発生して大量の資金が解約され残高がもっと減って2億円になったら・・・・などなど。

何らかの形で外国籍投信を組み入れているファンドは、外国籍投信の定額固定費用を負担しています。残高の小さいファンドは定額固定費用がパフォーマンスに甚大な影響を与えかねないので、そこだけは注意する必要があります。

まとめ

如何でしたでしょうか?もしかしたら預金代替にもなるかもしれませんね。もちろんリスクはあります。それをしっかり抑えた上で、納得して投資するならポートフォリオに加えたいファンドの一つです。

投信といえば米国株、ハイテク株といった風潮が出来上がっている中で債券ファンドに関心を持つ機会は極端に少なくなっています。株もあって、債券もあって、自由に組み合わせられるから面白いと思う私からすると、昨今の流れはかなり奇異に思えます。

埋もれたファンドの中にも魅力的なファンドは必ずあるので、いろんな目線でファンドを見つけてゆこうと思っています。

最後になりますが、ノルディック社債ファンドは一部の販売会社でしか投資できず、大手ネット証券では取り扱っていません。ご注意ください。

-投資信託
-, ,