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原油先物ファンドの再確認

原油の値動きが荒くなっています

10月までは原油価格は勢いよく上昇していました。世界的なワクチン接種の普及による世界経済の正常化を先取りした動きなどが原油価格を押し上げました。ところが欧州でのコロナ再拡大や備蓄石油の放出への動きが強まる中で原油価格は頭打ちになり、11月に入ると下落に転じました。上下に激しく動いている原油相場ですが、原油ファンドのパフォーマンスはどうなっているのか、調べてみました。

4ファンドの特徴と値動きを確認

日本で原油市場に投資することができるファンドは4つあります(当ブログ調べ)。まずは4ファンドの特徴と最近の値動きを確認しておきましょう。

今のところ、下げに強いのはUBS、真ん中が野村、弱いのがシンプレクスです(WisdomTreeはマーケットメーク制度の対象ではなく価格が荒れやすいため、順位からは外しました)。4ファンドとも原油先物に投資していますが、「対象指数の説明」に記述したように、ファンドによって投資する限月が違います。原油に限った話ではありませんが、一般に先物には様々な限月が用意されており、限月ごとに異なる値動きをします。異なる動きがファンド間のパフォーマンスに違いを生みます。4つのファンドが原油先物のどの限月に投資するのかは、投資する前に予備知識として調べておきましょう。

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原油に投資する前に知らなければならないこと

2021/11/4

原油高が続いています! 2020年には取引価格がマイナスになった原油。実物には保管コストやらなんやらが色々かかるため、というのがその理由だったようです。購入した人がお金をもらい、売った人がお金を払う、 ...

異なる限月の値動きをみてみましょう

では実際に原油先物が限月によってどのくらい異なる動きをしているのかをみてみましょう。例として2021年12月限、2022年12月限、そして2023年12月限をみてみました。2021年12月限は最終取引までの期間が少ないので期近物、2023年12月限は最終取引まで十分な期間があるため期先物と呼びます。

チャートと表から次の特徴がわかります。

  • 値上がり率 期近物 > 期先物
  • 値下がり率 期近物 > 期先物
  • 価格水準  期近物 > 期先物

4ファンドの中で期先のウェートが大きいのは「UBS」ですね。原油相場全体が上昇する相場では他のファンドには劣りますが、下げ局面では強いファンドです。

バックワーデーションでは期近が有利

先物価格の限月カーブが3番目の特徴(価格水準  期近物 > 期先物)にある時は、バックワーデーションと呼ばれます。先物は最終取引を超えないうちに、期近物を売却し期先物へ乗り換えなければなりません(ロールオーバー)。限月カーブがバックワーデーションにあるなら、価格が高い期近物を売却し、価格の安い期先物に投資し直します。そして一定期間たったあと、期近物になった期先物を売却し、新しい期先物へ乗り換えるロールオーバーを延々と繰り返します。安い期先を買い、先物価格のカーブ形状に従って値上がりした期近物を売却し続けることで利益が得られます。

カーブ形状の利益を得やすいファンドは「シンプレクス」、「野村」、「WisdomTree」で、「UBS」は得にくいでしょう。

  • 2021年12月限に50%、2022年12月限に50%投資していると仮定します。
  • 2021年は最終取引日が迫っているため売却し、2023年12月限に乗り換えます。
  • 1年後も原油先物カーブ形状が変わらない、と仮定するとカーブ形状から得られる利益は、2022年物が7.26*50%、2023年物が4.00*50%です。
  • 期先物はカーブが緩やかなので、カーブ形状から得られるリターンは少なくなります。
  • カーブ形状がコンタンゴの場合は、ロールオーバーの度に損を出すことになります。

何にベットしているのか?どのような効果があるのか?

原油先物に限った話ではありませんが、投資目的や付随リスクをきちんと理解した上で投資することが重要です。特に商品先物は株式先物や債券先物とは比較にならないほどの限月間の値動きと価格差があるので、ファンドが投資する限月やカーブ形状には注意しましょう。

最後に各ファンドのパフォーマンス特徴を簡単にまとめました(最後の列は運営管理コストです)。ご参考としてご覧ください。

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