レバレッジ投信シリーズ最終回となる今回のテーマは「今後のレバレッジ投信」。米国株式市場の上昇波動にうまく乗れて爆発的なリターンを出し、脚光を浴びているレバレッジ投信の将来像について考えてみましょう。まずは1回目から3回目までの重要ポイントをまとめました。仕組みとリターン計測がポイントです。
前回までのまとめ
- レバレッジ投信の目的はリターンの追求です。
- レバレッジは資金を借り入れる行為です。レバレッジ投信は、住宅ローンや信用取引(含むFX)と同じ構造です。
- 借りたお金には金利がかかります。レバレッジ投信はお金を借りていないので金利はかかりません(この表現についてはやや誤解を含むので、後ほど説明します)。
- 全ての投資信託と同様にレバレッジ投信にも信託報酬がかかります。
- 借り入れたお金を低リスク資産に投資しようが、高リスク資産に投資しようが構いません。レバレッジ倍率の高い投信でも株式より低いリスクに設定することができます。
- レバレッジは自己資本を食いつぶしたらゲームオーバーです。レバレッジ投信は自己資本を食いつぶしません。
- レバレッジ投信は毎日リバランスし組入比率をレバレッジ比率に合わせます。ベンチマークリターンのX倍のリターンが得られるのはその日一日だけです。
- ある時点を起点にしてリターン比較を行っても、ベンチマークリターンのX倍には一致しません。
なぜレバレッジ投信は借入せずにレバレッジできるのか?
レバレッジ投信が借入せずにレバレッジをかけられる理由は、投資資産が何らかの形でデリバティブを組み入れたレバレッジ構造になっているためです。最も単純なレバレッジ構造は先物を組み入れる方法です。先物価格は資金調達コストを含んだ形でプライシングされているため、先物に投資した時点で調達コストを負担していると考えます。
楽天投信さんやSBI投信さんが日本株先物を用いて4.3倍レバレッジの投信を運用しています。(仮に日本株が一日で100%/4.3=23.2%下落したら、自己資本が食いつぶされます。サーキットブレーカーが働き、一日23.2%以上の下落は生じない、ということなのかもしれませんが、少し不安です。)
仕組み債にした場合も基本的な構造は先物と同じです。証拠金を差し出して個別株やETFにレバレッジをかけて投資しています。レバレッジ投信は表面上は借入金利を払っていませんが、実質的には資金調達コストを支払っています。
レバレッジ投信の将来性1_投資範囲の拡大
レバレッジ投信のスキーム図を元にレバレッジ投信の将来性を考えてみましょう。
現在のところレバレッジ投信の得意領域は米国株と日本株で先物指数を投資対象とした投信です。これは投資家に先物指数に馴染みがあり成功体験があるせいでしょう。今後はレバレッジをかけられる投資対象範囲が拡大してゆくのではないかと思います。テーマでグループ化された個別株(ESGレバレッジなど)、欧州株先物、債券先物、商品先物にも広げてゆくことができるでしょう。ニーズがあるかどうかは別問題ですが、対象範囲を拡大することは可能です。
なお為替はすでにFXがあるので投資信託としては広がりにくいのではないかと思います。
レバレッジ投信の将来性2_倍率の拡大
投資範囲の拡大はヨコ方向の拡大ですが。一方、タテ方向の拡大は倍率になります。FXは20倍くらいまであるのでしょうか?高レバレッジは射幸心を煽りやすいので当局がどこまでレバレッジ倍率を認めるのかにかかっています。
レバレッジ倍率とリスク量は異なりますのでここは気をつけておきましょう。レバレッジX倍=株式レバレッジX倍ではありません(そのような商品も開発は可能ですが・・・)。債券、REIT、コモディティなどをうまくミックスさせ、リスク量を株式以下に組成することは可能です。レバレッジ倍率とリスク量は必ずしも比例関係にはないことに注意しておきましょう。
レバレッジの将来性3_流動性と資金調達コスト
投資対象範囲の拡大とレバレッジ倍率の拡大はアクセルをかけた論点でした。一方レバレッジの将来の制限するブレーキ役は何でしょうか?それは投資対象の流動性と資金調達コストです。
レバレッジ投信の得意範囲が株式先物である最大の理由は先物の流動性が極めて高いことにあります。逆に言えば個別株や個別債券など、流動性が低い金融商品は仕組み債にするときの調達コストが高くなってしまい、レバレッジ効果を薄めてしまいます。ヨコ方向の拡大の障害です。
調達コストはどうでしょうか。現在は低金利環境のため借り入れ資金の調達資金コストは極めて低いです。先物には資金調達コストが含まれて価格で取引されていますが、現在の金利環境では無視できます。これがレバレッジ投信にとってフォローになっています。間違いありません!
ところが仮に今後金利が上昇するとなればどうでしょうか。流動性が高い先物を使ったとしても、金利上昇による調達コストの上昇は全ての先物ユーザーの金利負担を重くすることは間違いありません。もちろん調達コスト以上に原資産が上昇すればレバレッジ効果を享受できますが、それは相場次第ですね。
まとめ
レバレッジ投信シリーズは一旦今回で締めとさせて頂きます。内容はいかがでしたでしょうか。レバレッジ投信の仕組み、特徴をよく理解した上で納得して活用できるのであれば、良い商品だと思います。今後は投信セレクションで気になるレバレッジファンドを取り上げてみようと思います。