行く年来る年
年末の足音が聞こえると、様々な機関、シンクタンク、金融機関が来年の経済見通しを発表してきます。ゆく年来る年のような一大イベントです。
冗談はさておき、先日OECDが経済見通しを発表しました。新型変異株オミクロンによる世界経済への影響を計数で評価するにはまだ時間も材料も不足していますが、それでも来年の経済成長のベンチマークとして市場で共有されている成長率を確認しておいても損ではないでしょう。比較のために10月に発表されたIMFの見通しも掲載しました。
来年の経済見通しをみながら投資方針について考えてみましょう。
2022年の経済見通しはおそらく下方修正されるでしょう・・・


機関名 | 発表時期 | 見出し 副題 |
OECD | 2021/12/1 | The global recovery is strong but imbalanced. Strong goods demand faces supply bottlenecks. |
IMF | 2021/10/12 | Recovery during a pandemic. HEALTH CONCERNS, SUPPLY DISRUPTIONS, AND PRICE PRESSURES. |
2022年の成長率見通しは、OECDが4.5%、IMFが4.9%と近い見通しになりました。見出しを見ると、両機関とも景気回復が見込まれる中で、サプライチェーンの回復の遅れがボトルネックになり、インフレ圧力が問題、と見ています。
米国の成長率を比較してみましょう。OECDは3.7%、IMFは5.2%で、両者の差が1.5%もあります。ただ前回分を見てもOECDが3.9%、IMFが4.9%と1%も違いがあるので、予測モデルのクセなのかもしれません。それよりも気になる点は前回からの修正です。オミクロン前に発表したIMFは上方修正、オミクロン後のOECDは下方修正です。OECDの下方修正の原因は、発表直前で発見されたオミクロンの影響を織り込んだ、米国の金融引締政策転換シナリオをより強く織り込んだ、はたまた原油高の景気押し下げ効果をより警戒した、のいずれかでしょう。
両機関の計数の大小はともかく、発表されたタイミングの遅いOECDの方が実態に近いと思われ、今後各機関やシンクタンクから発表される経済見通しはおそらく下方修正になると思われます。
下方修正と市場への影響は別物
ただ予想される下方修正が市場にどのくらいの影響を及ぼすのかとなると、これは微妙です。OECDの場合、下方修正幅が無視できる程度だったこともあり、見通しが発表されたあと市場は急速に反発しています。フラッシュ・クラッシュと言う造語も現れました。
そして、市場が次にどう動くのか?という予想以上に難しいのは、市場が下落した時の対応です。なぜなら影響の評価は投資の時間軸によって全く異なるためです。
明日の収益か、30年後の収益か
当たり前のことですが、市場の上げ・下げの評価は投資の時間軸によって全く異なります。時間軸が異なれば対応も全く変わります。
短い時間軸の投資家にとって、フラッシュクラッシュは相場から逃げ遅れて、次の上昇相場に乗り損ねるリスクでしかありません。コンマ何秒の短時間でポジションをガラガラ入れ替える必要があるかもしれません。
一方長い時間軸の投資家はどうでしょうか?きっと全く異なる景色に見えるでしょう。もちろんゼロ成長やマイナス成長が見込まれる経済環境でのフラッシュクラッシュが本格的な下げ相場の始まりを暗示することもあるでしょうが、幸いにも現状では来年度もプラス成長が見込まれています。積み増しのチャンスと見えているかもしれません。
このように投資の時間軸が異なれば、見える景色は全く違うし、対応も異なるはずです。各人各様の投資スタイルがあり、正解などありません。明日の収益を求めているのか、30年後の収益を求めているのかをきちんと知った上で、その人が納得でき、かつゲームオーバーにならない投資手法が良いでしょう。
短期投資スタイルなのに含み損を抱えたまま我慢する、長期投資家なのに短期売買に手を出す、などは明らかに望ましくないです。自分の時間軸ではないスタイルでポジションを作るのならば、まずはそれが自分本来のスタイルではないと肝に銘じ、万が一アゲンストに陥った場合の対処法を考えて確実に実行することが必要でしょう。