
投資の基本
投資の基本は何ですか?と尋ねられると、私は真っ先に「安く買って、高く売る」と答えます。「当たり前過ぎて話にならない」と呆れられる時も多いのですが、私が投資の基本として一番最初に思い付くことは「安く買って、高く売る」です。勿論、良いものでも高く買ってはいけません。同様に悪いものでも高くなる可能性を見捨ててはいけません。
ところが・・・
投資の世界において「割高」や「割安」を論じることは難しいものです。ある銘柄について高いと感じる人は売るし、安いと思う人は買うためです。市場で売買が成立しているのは、割高論者と割安論者が拮抗しているから、と言っても良いでしょう。
伝統的な割高・割安判定方法は、将来発生するキャッシュフローを割引率でディスカウントバックした現在価値と市場で取引されている価格を比較します。しかし投資家やアナリストによってキャッシュフロー予測や割引率が異なる他、評価モデルも異なるため、人によって判定結果は異なり、投資判断も変わります。
チャートに頼った投資方法も人によって様々です。
どんな方法を使っても客観的な価値評価方法や投資基準などはほぼ存在しないと考えて良いでしょう。
それなのに、「割安で買って、割高になったら売る」ってどーゆーこと?とお叱りを受けそうですが、要は、買いも売りも自分が納得すれば良いのです。投資は自己責任、将来は誰にもわかりません。わからない将来にお金を賭けるわけですので、掛け方には納得感が必要です。より充実した納得感を得られるように努力すること、これが投資の基本です。
個別銘柄に投資するなら、検討している企業の製品を実際に使ってみる、CMを見る、など日常生活を通じて愛着が湧きそうな機会に恵まれています。納得投資のハードルは下がりやすいでしょう。
個別銘柄投資はリサーチが大変だから投資信託で代替したい人も多いと思います。では投信で納得投資を果たすには、どうすれば良いでしょうか・・・
納得してから投資信託を買うには・・・
投資信託は一応プロ(自称)が受益者の資金をファンド性格に従って運用するわけですが、プロと雖も人間です。普通に失敗しますし、予想した未来が実現しないことも当然あります。そんな投資信託に対して、投資家(受益者)が納得感を得ながら投資なんて出来るの?と懐疑的になってしまいますよね。普通。
- ファンドマネージャー(運用会社)に惚れ込むことが出来るか?
- (対面販売の場合)信頼できるセールスか?
- ファンド性格(投資テーマ、投資対象、投資通貨)に納得できるか?
- 私に投資センスはあるのか?
1.優秀なファンドマネージャーや運用会社に出会えた方は素晴らしい!その出会いを大切にしてください。残念なことに出会えなかったら、トラッキングエラーが小さく、コスト(販売手数料、信託報酬、その他費用)の安いパッシブ投信を選べば、納得投資に近づけるでしょう。
2.優秀な対面セールスに出会えた人はラッキーです。優秀なセールスはsomething new, something interestingを教えてくれますから。お金では買えない繋がりに発展することもあるでしょう。ただ販売会社との付き合い方は「対面」から「ネット」へシフトしています。セールスから話を聞く時間が勿体無いとか、自分で調べられるのであれば、販売チャネルが納得投資の障害になることはないでしょう。
3.次世代のテーマは、脱炭素だ、いやシルバービジネスでしょ?いやいや個別テーマではなくてベトナムですよ、などなどいろんなテーマやジャンルが投資信託にはあります。納得できないならば、ローリスクの投信に一時的に退避することもできますので、ファンド性格も納得投資の障害にはなりづらいでしょう。
納得投資の最大の課題は「4.私に投資センスはあるのか?」という点です。1.〜3.も投資センスと言えなくもないですが、4.で言う所の投資センスは、エントリーとエグジットのタイミングです。
エントリーとエグジットのタイミング
納得を感じて計測するチャンスが1回限りの厳しいゲームでは、その投資に満足したかどうかを測ることは不可能です。エントリーもエグジットも、ある程度の試行回数を重ねて納得投資の評価をすべきでしょう。
試行回数と言っても投資する資金にも限りがあるし、と思う方もいらっしゃるでしょうが、ネット証券では100円刻みでも投信の買い注文と売り注文を受け付けていますので、1ヶ月に2万円積立投資をしている方には毎日100円で投資してみてはいかがでしょうか?ある程度まとまった資金のある方でも、エントリーを数回に分け「時間分散」を図りながらポートフォリオを組成します。買いの時間分散の最大の強みは、買い付け簿価の引き下げです。そしてたまにはアクセントをつけた買い方というのも実践してみれば、エントリーのタイミングについて納得が高まるのではないかと思います。アクセントは別の機会でふれてみようと思います。
エントリーはお金を使う立場なので、高揚した気分になりやすく、気合いで買っちゃうケースが多そうです。一方エグジットの場合は、利益確定は後ろ髪を引かれる思いになるでしょうし、損切りは意気消沈しながらポジションを閉じることが多いのではないでしょうか。未実現利益(損失)が実現するとき、様々な感情が生まれるのは仕方ありません。急な出費が必要になった、などの理由でポジションを解消された方が心理的にはまだマシなように思います。実務的にはターゲットに達した、損切りポイントに達した、などの理由を予め立てておくのが一般的だと思いますが、ポジションを外す時の考え方はもっとあるのではないか、と思います。今後の課題ですね。
まとめ
1.投資の基本は「安く買って高く売る」 2.安い/高い、割安/割高、に正解なし 3.エントリーは買い付け簿価が下がる時間分散がオススメ。お気に入りのファンドを毎日100円ずつ投資しよう。 4.エグジットタイミングは今後の課題。